2007年11月10日

地獄くん/ムロタニ・ツネ象 2

保育園の園舎で読んだ「地獄くん」に、もうひとつ、地獄くんが全く出てこない、ですが凄く印象深くて忘れられない「地獄の声」という一編がありました。「地獄くん」とは違う短編だとずっと思っていましたが、コミックスには「地獄くん」として収録されています。

暴走スポーツカーにはねられた三太郎少年は、亡者の行進に引きずられてエンマ大王の元に辿りついた。三太郎に極楽行きを告げるエンマ大王。死者である印に、三太郎の身体にはヘソがなくなっていた。

まだ死にたくない、もう一度両親に合わせて欲しいと願う三太郎に、エンマ大王は、死界の掟を破って「24時間の契約」を条件に、二度目の生命を与えることを決めた。

「24時間の契約」とは、三太郎が生き返ってから24時間、どんな人間とも喋らないこと。喋れば死界へ逆戻りして、極楽への道を進むことになるというものだった。

…これを読んだ時の、どきどきした気持ちは今でもよく覚えています。冒頭の、暗闇を歩く三太郎がふと気づくと、地面いっぱいに果てしなく手が生えていて、亡者の行列に三太郎を引っ張っていく場面から、マンガに引き込まれました。

生き返った三太郎を両親や友人が心配しても、時を刻む地獄時計の音が「ゴッチゴッチ」と聞こえてくる三太郎は何も言うことが出来ない。家を飛び出して、建設現場の土管に隠れて孤独に耐える三太郎。お腹がすいてパンを買うが、店のお兄さんにお釣りをごまかされて、抗議すら出来ない。三太郎をはねたスポーツカーの男たちが恐喝をしている現場を見ても、助けを呼ぶことも出来ない…。

もう自分の事のように、完全に感情移入して読んでました(笑)。…ここまでの怪奇でスリリングな展開も、幼児にとっては充分過ぎる忘れられないトラウマですが、さらに物語の結末は、余りにもショッキングなものでした(以下ネタバレありです)。

夜が明け、「24時間の契約」完了の時間までもうあとわずか2時間ほどの辛抱と、孤独に耐えて朝の空気を味わう三太郎。その目前で、道路美化清掃中のおじいさんがスポーツカーにはねられた。運転していたのは、三太郎をはねた同じ男達だった。

通りがかりのダンプカーの運転手に事故の罪をなすりつけ、集まってきた通行人の前で運転手を殴りつける、スポーツカーの男達。見かねた三太郎は、そしてとうとう叫んだ。

「うそだっ!! ぼくはみたぞ!! 犯人は そのふたり組だ!!」

前回の「地獄くん」のお話で、私は地獄くんの存在を「人の力のおよばない"因果応報"のビジュアル的象徴」としましたが、この「地獄の声」では、三太郎は因果どころかエンマ大王から極楽行きと判定されているほどの善として描かれているのに、「24時間の契約」を果たせなかったばかりに、無情に死界へと引き戻されてしまいました。「それにしてもなんと、美しい死にがおだ」という、現場の警官の憐れみの言葉こそあったものの。

幼児の私にとって、人の力のおよばない"死"という概念を初めて突きつけられた、忘れようのない一編でした。
posted by bonso at 22:05 | Comment(6) | ムロタニ・ツネ象
この記事へのコメント
あのエピソードは、地獄くんシリーズとして扱っていいのだろうか?と思ってしまいますが、なぜか地獄くんの本に収められているんですよね。
考えてみればヘンといえばヘンなんですが、あまり違和感も無い気がして、ちょっと不思議です。

あのエピソードでは描かれてませんが、スポーツカーの男たちは、あの後に 地獄くんによって地獄送りにされたものと思われます。
そう思うと、少し納得できる気がしませんか??
Posted by 時代屋だんぞう at 2007年11月12日 19:08
おお、さっそくコメントありがとうございます。
あの時読んだこの「地獄の声」のタイトルは、「地獄くん」だったのだろうか…。

地獄くんが出てくる方の「地獄くん」の地獄くんの台詞で(ややこしい・笑)、
「もうおそいよ エンマ大王の帳面にあんたの名まえがかきこまれているからね ぼくの力じゃどうしようもないよ あきらめな」とありますが、あの地獄くんと、この一編とがセットになって「地獄くん」は名作だと思います。

>スポーツカーの男たちは、あの後に
そうですよね。パトカーで連行されながら悪態をつく男たちがふと気づくと、運転する警官が地獄くんになっていて、パトカーは霊柩車に変わっていたことでしょう。きっと。
Posted by bonso at 2007年11月12日 22:31
「地獄の声」は「地獄くん」とは別の作品です。同じく少年サンデーで、「地獄くん」の連載終了後に2週ほど掲載されました。
その後、「地獄くん」は光文社の月刊「少年」に再び連載されたが、休刊のため未完となりました。

以下、蛇足。
秋田書店の月刊「冒険王」には、「地獄太郎」が連載されました。「地獄の声」の地獄の設定が引き継がれています。
もう一度読みたいです。地獄太郎に休日はない…。
Posted by 天国三郎 at 2009年06月06日 18:19
>天国三郎さん

はじめまして。情報提供どうもありがとうございます。

「地獄くん」終了後の短編でしたか。それを読んだのが幼稚園時代で、尚且つ単行本には「地獄くん」の一編として収録だったので分かりづらいことになっていましたね。

「地獄太郎」は知りませんでした。読んでみたいですね。

では天国三郎さんに感謝を込めて、「あんたは天国行きだよ、天国さん」。
Posted by bonso at 2009年06月07日 00:50
「地獄太郎」は、「マンガ図書館Z(ゼット)」で検索してください。ネット上で、無料で読めます。
40数年ぶりに読めて感激でした。
Posted by 天国三郎 at 2016年12月31日 12:30
天国三郎さん

こんにちは。ご無沙汰しています。
ここを覚えていていただいて、有難うございます(●´∀`●)

「地獄太郎」読みました。
最初の閻魔様とのやりとりは、なんだか覚えがある気もしますね。

また、ついに「パビリオン地獄」が読めました! 生首ボーリングも見れました(笑)。有難うございましたー(^ω^)
Posted by bonso at 2017年01月08日 13:03
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